43.時事新報二題(著作権法の一部改正案/蝋筆小新) 田中 明(CARS監査役)
1) 政府は2012年3月9日、今日のデジタル・ネットワ-ク環境の充実に対応すべく、著作権等の制限規定及び技術的保護手段に係る規定の整備を目的とした著作権法の一部を改正する法律案を閣議決定し、今国会での成立と2013年1月1日からの施行を目指すこととしています。なお、下記の④については本年の10月1日施行を予定しています。
同法律案の概要は以下のとおり:
① いわゆる「写り込み」(拙稿No.19:「『写り込み』とは?」参照。)等に係る規定の整備
② 国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信に係る規定の整備
③ 公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
④ 著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備(著作権等の保護の強化)
詳細は文部科学省HPをご参照ください:http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/_icsFile:
2) WIPO(世界知的所有権機関)が2012年3月12日、マドリッド協定議定書(Madrid Protocol)に基づく2011年の商標(Trademark)の国際登録出願状況を発表しました。総件数は42,270件で前年比6.5%増。過去最高だった2008年の42,027件をしのぐ最高を記録したとのこと。国別件数の上位10カ国はEU、独、米国、仏、スイス、伊、中国、ベネルックス、露、日本の順でしたが、商標の対象地域である「指定国」別の順位では断突の1位が最近話題に事欠かない中国で、18,724件(前年比16%増)と報告されています。詳細はWIPOのウェブサイトをご参照ください:http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2012/article_0004.html
ところで、中国や商標といえば3月14日、原作者と無関係な中国企業によって同国で商標登録されていた日本の人気漫画「クレヨンしんちゃん」(中国名:「蝋筆小新」)が、3年間の未使用を理由に登録を取消され、中国の裁判所もこれを支持したことが明らかにされました。そもそも「蝋筆小新」の名称とデザインは1996年、広州市の眼鏡会社恩嘉公司等が商標登録を出願し、翌97年に登録されており、原作の著作権と商標権を管理する日本の出版社(双葉社)が2004年、中国で関連グッズを販売しようとしたところ商標権侵害で訴えられたため、逆に、双葉社が中国企業側に対し、著作権侵害と商標登録取消しを求めて提訴していたものです。
著作権侵害訴訟では、一・二審ともに商標権と著作権の抵触関係の解釈論から不受理とされ、双葉社側が最高人民法院に上告していたところ2008年11月、同法院は下級審の不受理は不当と認め、上海中級法院に差戻し2012年3月23日、同中級法院は、被告の1人である上海恩嘉経貿発展有限公司に対し、30万元(約390万円)の賠償と侵害停止を命ずる判決を下しました。
一方、商標権取消訴訟については、上告審まで争われ2008年12月、双葉社側の請求が商標登録後5年の除斥期間を経過していることを事由に棄却されたところ、双葉社側が、3年間の商標権の未使用を理由とする商標登録取消しを請求したため、商標審査委員会は2010年、登録を取消しました。しかし、今度は中国企業側が不服を申し立て提訴しましたが、北京市人民法院は2012年3月13日、商標審査委員会の取消し決定を支持し、企業側の提訴を棄却、結審しました。
それにしても、最近の中国の商標権乱用等には目に余るものがありますが、かつて、中国にベルヌ条約加入を迫った国々に対し、同国は、「それならば世界の人民は、中国4千年の歴史の所産たる“料理レシピ”に対する利用料を支払うべきだ」と真顔で反論した時期があったことが思い出されます。先頃、日本の国会でも中国の知的財産権に関する認識が話題にされましたが、翻ってわが国の実態はといえば、あまり人様のことをとやかく云えた立場ではないような気もいたしますが...。