[ブログ] 楽譜de散歩
2012.05.18 その他

46.「自炊」代行差止め訴訟の続報 田中 明(CARS監査役)

【執筆者】田中 明(CARS監査役)

昨2011年末、拙稿No.39(「2011年末に寄す、追録二題」)の①で、「行方を見守りたいと思います」としていた標記事件につき2012年4月27日、被告の一人である有限会社愛宕(神奈川県川崎市、以下『愛宕』)は、浅田次郎、大沢在昌、永井豪、林真理子、東野圭吾、弘兼憲史、武論尊ら原告7人の提訴した「自炊」代行に係る差止め請求を認諾した旨を同社の「訴訟の認諾に関するお知らせ」と題する文書により発表しました(全文は同社URL http://www.ata5.jp/news にて参照可)。

本件の経緯を振り返ってみると2011年9 月、上記7人を含む122人の作家、漫画家と出版7社が連名で自炊代行事業者約100社に質問状を送付し、回答事業者の大半が、今後は著作権者の許諾なくして自炊代行は行わないと回答したのに対し、『愛宕』と『スキャン×BANK』の2社が今後も継続する旨の意思表示を行ったため、上記7人が同年12月、この2社に対し、提訴に踏み切ったものでした。その結果、『愛宕』は認諾し、『スキャン×BANK』は2012年2月以降、代行業務を停止しつつも、「認諾」はしていません。

なお、ご参考までに付言すれば、「認諾」という法律用語の意味するところは、本件のような「民事訴訟において、被告が請求の全部または一部が正当である旨肯認する陳述」(内閣法制局法律用語研究会編「法律用語辞典」有斐閣刊, 1994, p.774)のことであり、また、「事実を認める陳述である自白と異なり、訴訟が終了する。請求の認諾を記載した調書は、請求認容の確定判決と同一の効果を有する」(同前掲)とされています。

今回、『愛宕』の上記文書を見る限り、これ以上本件に関わっていると、同社は本業のシステム開発事業に支障を来すため、不本意ながら、もう争わないことにした、と云っているようなものであり、自炊代行肯定論者としての主張は曲げていないように見受けられます。したがって、訴訟は終了しても、本件の本質的な問題は白黒が定まらないまま、依然として存在し続けることになり残念です。