When I’m Seventy One 野方 英樹(CARS幹事)
昨年の11月19日、1990年以来自分としては2度目となるPaul McCartneyのコンサートを観るために東京ドームへ足を運びました。そこで目にしたのは、71歳という年齢を感じさせないパワーと音楽を楽しむ姿。コンサートを観た人の多くが、大した休憩も取らず、客の前で水すら飲まなかったことを終了後話題にしました。それに、誰が今回のツアーの、しかもアンコールで、ハイ・トーン・シャウト系の「Hi Hi Hi」や「Helter Skelter」を演奏すると想像したでしょう。敢えて当日までそれまでのツアーのセットリスト情報から目を背けてきた私にとっても本当に驚きでした。
きっとこのコンサートを観た多くの彼のファン、とりわけ楽器を演奏したり歌を歌ったりする人たちは、自分だって71歳になっても彼のように現役で演奏し続けていられるかもしれない、と自信をもらえたのではないでしょうか。もちろん、私も例外ではありません。
そう考えた時、ふと、The Beatlesを聴くようになってからほどない中学1年生の頃手に入れた、彼らの全曲(その本ではLennon-McCartneyの手になるものに限られていましたが)の歌詞とメロディ、コードを記載した楽譜集のことを思い出しました。当時の子供ながらのなけなしのお小遣いで買った分厚い本は、小口がどこも真っ黒になるまで何度も見返され、挙句、背と本体が分離するようになってしまったのを修復してはまた見返していました。最初は歌詞を見ながらレコードやカセットテープに合わせて歌うため、やがてギターを手にした私は、コードを見ながら弾き語るのを何より楽しみにしていました。今ギターやベースを手に開くのは、二代目となる、彼らの全曲のバンドスコアが掲載された本に変わりましたが、まだ当時の本は実家に残っています。
かくいう私は大の本好きで、中学、高校時代には特に国内外小説を濫読していました。しかしながら、実は複数回読んだ本というのはそう多くはありません。SFのいくつかのシリーズと作品を通して特に好きになった数名の作家のものだけです。そう考えると、実は今まで最も多く手にし、開いてきた紙の本が、先に書いた2冊のThe Beatlesの楽譜集であったことに今更ながら思い至ったのでした。
中学1年からこれまで開き続けた楽譜集は、もう一生の友であることが約束されている気がします。それほどまでに離れず、共にいてくれる音楽、楽譜。バレンタインのカードやワインのボトルは送ってくれませんが、心から信頼できる伴侶です。私が71歳になっても、きっと現役で私の傍らにいてくれるに違いありません(実は、二代目は一冊がぼろぼろになったときのためにもう一冊大事に持っています)。私がまだ若かった時代には、まだそれほどコピーも広く行き渡っても、また安くもなかったと思います。だから、というわけではありませんが、やはり今でもあのとき楽譜集を買って良かったな、と思います。自分のものだからこそ一生の伴侶にできたのだと。