[ブログ] 楽譜de散歩
2015.03.20 音楽について

楽譜と鉛筆 野方 英樹(CARS幹事)

【執筆者】野方 英樹(CARS幹事)

先日開催されたCARSの幹事会で、楽譜をどのように作成しているか、という話になりました。きっと広く使われていると聞いている楽譜作成用パソコン・ソフトかな、と思いきや、幹事である末吉先生も上先生も鉛筆です!と。ちょっと驚きでした。因みにメカニカル・ペンシルはだめ、あくまでも鉛筆だそうです。濃さは4Bや2B。削り方も以前は普通の円錐形ではなく、平べったい形にされていたとか(楽譜が書きやすい)。そしてお二方とも芯の丈夫さなど、日本製の鉛筆を絶賛されていました。

私がこの話に興味を持ったのは、私自身が公式文書を作成する以外、仕事は鉛筆だからです。ただし私の場合はメカニカルですが。何か集中してアイディアを絞り出すとき、部下の作成した書類に赤を入れるとき、必ずメカニカル・ペンシルを使います。できるだけ濃く柔らかい芯が一番スムーズに頭の中にある考えを引き出してくれるような気がして、私も4Bを愛用しています(もちろん日本製)。最初は0.5mmだったのが、0.7mm、そして今は0.9mmのものが手放せません。

例えば私は様々な機会に講演させていただくことが多く、Power Pointを使った資料を良く作ります。そんなときは、いきなり画面に向かうのではなく、まずA4の紙を8等分して紙片に切り分け、1枚1枚を小さなスライドに見立てます。そして依頼されているテーマに沿って区切りとなるスライドを決めて大枠を作り、さらに区切りの間のスライドで何を言うかをまた紙片に殴り書き、全体を組み立てていきます。その後、話の順番を頭に描いて紙片を並べ替えたり、失念していたものを追記してはめ込んだり。机いっぱいに紙片を拡げながらこの作業をして話のプロットを概ね完成させてからパソコンに向かいます。こうすると断然早く、良いものができると経験上思っています。

そして、この過程で紙片に殴り書く筆記用具こそが、メカニカル・ペンシルです。とても発想が自由になる気がします。書き足すのも消すのも自由。なにより「芯」という字には「心」があります。自分自身の思いをよりよく表現してくれるような、そんな気がします。

鉛筆から楽譜が書き起こされる音楽は、今は少ないのかもしれません。もちろんそのことによって音楽の価値が変わるとは思いません。ですが、自分が聴いている音楽が、まだパソコンが無い時代、まだコピー機もない時代にどのように作曲者の方の手によって最初に楽譜として世に産み落とされたのか、鉛筆に拘っている人はいたのだろうか、そんなことに思いを馳せてみるのもまた音楽の楽しみの一つになるような気がしました。