[ブログ] 楽譜de散歩
2014.12.26 著作権について など

出版権制度の拡大 韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

【執筆者】韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

“紙媒体による出版のみを対象とした出版権制度を拡大し、電子書籍にも対応した出版権の整備”を趣旨とした「著作権法の一部を改正する法律」が、去る4月25日の第186回通常国会において成立,平成27年1月1日からいよいよ施行されることとなっています。

施行後、紙媒体やCD-ROM等による出版、及びインターネット送信による電子出版について、著作権者との契約に基づき出版権の設定を受けた出版権者は、頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法での複製、さらには公衆送信を行う権利を専有し、インターネットを用いた無断送信(海賊版)等を自ら差し止めることができるようになります。また、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、第三者への当該著作物の複製、公衆送信の再許諾が可能となります。

出版権者自ら、電子書籍の海賊版等の権利侵害にも対抗できるようになることが、出版者にとって多少のメリットとなっていくことは明らかです。しかしながら、先日のブログでも触れたように、楽曲著作権が消滅している楽譜等も多数刊行している楽譜出版者への、今回の法改正による恩恵は、残念ながらほとんど見当たりません。

今回の法改正に至るまでの経緯を簡単に説明させていただきます。1985年から5年以上の歳月を費やし、45回もの有識者による会議を経て提出された1990年文化庁の著作権審議会第8小委員会による報告書で、「出版者に固有の権利を著作権法上認めて保護することが必要である」(CD等の原盤をつくるレコード製作者に認められている、いわゆる“原盤権”同様、出版者がつくった出版物の版面等に対しても著作隣接権を認めるべき)と結論付けられたにも係わらず、日本経団連等の反対により法制化が見送られてしまいました。その後20年以上が経過し、“著作隣接権による出版者の保護”の気運が再燃。日本書籍出版協会をはじめとする出版界、また、超党派議員による「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」でも“隣接権による権利保護”を前提とした議論が重ねられ、2012年には“出版者への著作隣接権がついに法制化か?“とメディアでもとりあげられ、にわかに出版業界は盛り上がったものでした。結局は二十余年前と同じく経団連等の利用者団体、コミック等の権利者団体などの反対意見により、今回の非常に中途半端としか言えない法改正となり、またもや出版者の長年の悲願であった著作隣接権創設の夢は潰えることとなってしまいました。“中途半端な法改正”とは、もちろん私の個人的感想にすぎませんが、今回の法改正に対しては、著名な法律家による批判的意見も多数出されています。また、“出版者に著作隣接権を”の思想はこれを機に完全に葬り去られてしまったとの意見がある一方、“中途半端な法改正”であったがゆえに、再々燃の可能性は十分ある、との意見も少なからず存在しているようです。

来年以降も引き続き“出版者固有の権利創設”の必要性は主張しながら、クオリティ向上はもとより、ユーザーの利便性も考慮した、“思わずオリジナルを買いたくなる”と言っていただけるような、魅力ある「楽譜」供給の一端を担っていければと考えています。