譜面審査だけ? 韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)
前々回の末吉保雄先生、前回の上明子先生もCARSメンバーだよりで触れられていましたが、3月上旬に報道された、日本で最も伝統ある某音楽コンクールが作曲部門・本選審査での公開演奏審査を今年からは取り止め、譜面審査のみで受賞作品を選出することを決定したニュースについて私見を書かせていただきます。
前回までの某コンクール作曲部門の審査では、審査員による譜面第一審査、譜面第二審査があり、第二審査を通過した作品についてはその後、本選での譜面審査と演奏家による公開演奏審査を経て、受賞作品が決められてきました。ところが今回の決定により、今年からは本選での公開演奏審査がなくなり、譜面審査のみで受賞作が決定することになってしまいます。これほど歴史あるコンクール審査にもかかわらず、作曲家が楽譜に記した音符が実際にはどのように響きわたるかを聴かないまま、順位が決められることになるのです。えっ、本当に大丈夫ですか?実際に鳴っている音を聴かないままの審査で?私の素朴な疑問です。
新聞報道によると、演奏審査を取り止める理由として「楽器演奏上の都合等により、楽譜通り演奏されない可能性があること」、「演奏の良し悪しが審査結果に影響することを避けるため」、「経済的な要因」等をあげていますが、一番の理由は“経済的要因”ではないでしょうか。本選に残った全作品の指揮者、オーケストラ、演奏用パート譜、演奏会場等々の手配には相当な経費が発生し、運営上さまざまな問題に直面することは想像に難くないでしょう。決して好景気とは言えない現状、コンクール継続さえも困難であるということは十分理解はしつつも、実演されないまま、楽譜審査のみで音楽芸術作品の審査が成り立つとは私にはどうしても考えられません。
譜面を見れば瞬時に頭の中で“音を鳴らせる”優秀な方々が審査されることとは思いますが、実演からしか感じ取れない“音楽”は間違いなく存在しており、存在しているからこそ芸術なのではないでしょうか。
レシピを見るだけでは、決して味の評価までは下せません。是非とも近い将来、何とか演奏審査が復活することを切に願っています。
演奏されて始めて楽譜の真価が発揮されることは明白です。引き続き楽譜の適正利用を呼びかけていくことはもちろん、楽譜出版に携わる身として、ユーザーが演奏したくなる質の高いオリジナル楽譜を提供していけるよう尽力してまいります。
一般社団法人日本楽譜出版協会のホームページ http://www.j-gakufu.com/