[ブログ] 楽譜de散歩
2017.11.24 音楽について

打楽器演奏会にて 韓 貴峰(CARS幹事)

【執筆者】韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

 先日、長年の友人でもある打楽器奏者のソロコンサートに行ってきました。まさしく世界をまたにかけ活躍しているアーティストの、久々の東京での公演ということもあり、会場は開演前から熱気に包まれていました。
プログラムはM.カーゲル、D.シュネーベル、細川俊夫ほかの現代音楽作曲家の作品を中心に、奏者自身による即興作品など、張り詰めた空気の中演奏されていましたが、終盤には来場者と一緒にサンバ打楽器を習おう・演奏・踊ってみよう!という、緊張と緩和が一度に体感できる素晴らしいイヴェントでした。

 あまり知られていないかもしれませんが、打楽器奏者が演奏用楽譜を受け取った後に、先ず手がけなければならないこととして“楽器収集”があります。特に前衛的な打楽器のための作品では、太鼓、マリンバ、ティンパニー、シンバル等のいわゆる既成の打楽器以外での演奏が、作曲家により指示されていることが少なくないからです。例えば木片、ガラス片、鉄の鎖、車のタイヤ等々。世の中に存在する音が出るものは全て、楽器として成立するようなもので、その収集には苦慮することが多いようです。
 必然的にこれらの作品の演奏用楽譜も、相当特異な表記となっているケースが少なくありません。ピアノ楽譜などの一般的な五線譜上に表記される音符も、もちろん存在はしているのですが、それ以外の様々な作曲家独自の記号表記等により、例えば小太鼓を叩く場合に皮の中心なのか、あるいはふちを叩くのか。叩くばちの種類が指定されており、硬い、普通、柔らかい、スーパーボール程度柔らかい等。さらには爪ではじく、関節で叩く、爪先で叩く、爪先で騒音を、等々。作曲家の頭の中で鳴っている楽曲イメージを、詳細に演奏者に伝えるべく、例をあげればきりがない程の多様な表記が、楽譜上に時にはイラストのように、時には精密な設計図のように書き表されています。

 時に楽譜は創作者から演奏者・聴衆へのメッセージのようでもあります。音楽文化発展には欠かすことのできない、楽譜の継続的な刊行を絶やさないためにも、適正な楽譜利用を呼びかけてまいります。

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