[ブログ] 楽譜de散歩
2015.09.04 音楽と社会

楽譜コピーについて② 韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

【執筆者】韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

某大手企業の景品デザイン一部への“第三者が制作したデザインの無断トレース使用”をめぐる報道には「プロの世界でもこんなことが現実にあるのか?」と本当に驚かされました。今回のような営利事業上でのプロデザイナーによる無断トレースは“盗作”と非難されても、何の言い逃れもできない言語道断の行為!あってはならないことでしょう。個人的見解に過ぎませんが、インターネット環境の飛躍的な進歩に伴い、誰もが気軽に入手できる、あらゆる分野の莫大な情報があるからこそ、このようなことが起こり得たのではないでしょうか?

私自身も出版業に携わる身ですので、外部からの情報や他人の著作物等に接する機会が非常に多いです。もちろん業務上では細心の注意を払い、適宜処理をした上での著作物利用を徹底してはおりますが、いざ一個人に立ち返って自分自身、家族、友人等、周りを見渡してみると、全く悪意のない“個人使用のための軽い気持ち”で行われている、いわゆる“コピペ”等により“厳密に考えると実は違法な行為?”となってしまっているケースも皆無ではないかなと。利便性が飛躍的に高まっている分、今まで以上に注意を払って接していくべきかもしれませんね。

先日、共通の知人を通して知り合ったレコード業界の方と話をする機会があり、そこで話題の中心となったのが“カジュアルコピー”蔓延が、いかに音楽CD等の売上本数減に影響しているか?という話でした。雑談程度の会話でしたので、詳細な実態までは聞けませんでしたが、年々減少している売上本数の大きな要因の一つとなっていることは間違いないであろう、とのことでした。

“カジュアルコピー”とは、主にソフトウェアや音楽データなどの著作物を、個人使用のために何気なく、不正コピーを行うこと。「友人から借りた音楽データ等をコピーして自分のパソコンにいれて楽しむ」等が最も顕著な例で、販売目的での大掛かりな海賊版制作等、違法複製による悪質な犯罪にあたるケースは含まれていません。“カジュアルコピー”一件あたりの損害は軽微かもしれませんが、何せ“一個人”が行うことですので、毎日膨大な件数が行われていることと考えられます。当然各ジャンルでの損害も膨大な金額となってしまっていることでしょう。

楽譜の領域も例外ではありません。誰もが手軽に扱えるデジタル機器普及の影響もあり“カジュアルコピー”問題は日々深刻化してきていると思われます。多くの家庭が所有している低価格な家庭用プリンターにも、当然のようにスキャナー機能が搭載されており、極々簡単に楽譜等のデジタルデータ化が可能ですし、スマートフォンで撮影された静止画像、動画のクオリティーにも驚かされます。今や、友人から借りた楽譜の、コピーをとりにわざわざコンビニに出かける必要すらありません。他人のスマホやPCに保存された楽譜デジタルデータを、軽い気持ちでコピー、共有してしまっている楽譜ユーザーも相当数存在するのではないでしょうか。違法性を認識しながらも、あまりの手軽さについついコピーしてしまうケースも多いのでは…。

デジタル機器等の進歩に伴う利便性向上により、今まで以上に“手軽な”無断楽譜コピーが横行してしまうことに強い懸念を抱いております。軽い気持ちで行われる個々の無断コピーが、間違いなく著作者の創作意欲を妨げ、ひいては音楽文化の発展を阻害する大きな要因となり得ること等を楽譜ユーザーに説明しながら、適正な楽譜利用を呼びかけていきたいと思います。

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