[ブログ] 楽譜de散歩
2017.01.27 楽譜出版社の思い

オンデマンド楽譜 韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

【執筆者】韓 貴峰(CARS幹事/日本楽譜出版協会)

現在、世の中に流通している書籍、楽譜などの印刷物のうち、結構な割合が既にオンデマンド印刷[on-demand publishing, POD(print on demand)]により作製されています。通常印刷より割高にはなってしまいますが、一部単位で受注、印刷、製本、配送を行う、いわゆる“受注生産方式”のこと。特に楽譜出版の分野では、売上部数減少により従来方式での継続出版が困難=品切れとなっていたタイトルを、オンデマンド方式に切り替えるケースが非常に増えているようです。日進月歩の勢いで進化し続けているオンデマンド印刷技術により、従来版にも見劣りしないクオリティーでの供給が可能となってきていることも増加理由の一つではありますが、恒常化している出版不況が最大の要因でしょう。小売店はもとより出版社でさえ、財政的に最小限の在庫しか保有できない実状を踏まえると、今後もオンデマンド印刷への移行が進んでいくのは確実です。

私が勤める会社でも1998年頃からオンデマンド印刷による楽譜供給を行っております。開始当初は特に製本技術が今ほどは進歩しておらず、担当者が一冊ずつ、ほとんど手作業で製本・出荷していましたので、対応できるタイトル、受注冊数も極々限られていました。今日では、先にも書きましたが印刷・製本技術の進歩により、オリジナル曲集以外の楽譜ユーザーの都合に合わせた抜き刷りピース楽譜、カスタマイズ曲集なども、状況に応じては供給させていただいております。楽譜出版社ならピース楽譜ではなく曲集を、レコード会社ならCDアルバムを購入してもらいたいのが本音でしょうが、楽譜、音源ともに「いま必要なものだけを購入」が時代の主流、致し方ないことです。

オンデマンド印刷、楽譜ダウンロード配信等による楽譜供給が普及していることも要因の一つと思われますが「(絶版等の理由により)入手困難となっている楽譜のコピーをしたいのですが…」という問合せはここ10年ほどで随分少なくなったと実感しております。入手可能であれば正規楽譜を購入する、という構図が徐々に浸透してきているのではないでしょうか。残念ながら、楽譜入手のためには対価を支払うものだ、という認識を持たないユーザーが少なくないことも現実ではありますが。

今後も引続き、一楽譜出版社員として楽譜の適正利用を促すだけではなく、楽譜購入の更なる利便性向上に取り組んでいきたいと思います。

一般社団法人日本楽譜出版協会のホームページ