[ブログ] 楽譜de散歩
2020.05.07 音楽と社会

閉ざされる世界の中で…  織江 りょう(CARS幹事/作詞家)

【執筆者】織江 りょう(CARS幹事/作詞家)

 中国武漢に端を発した新型コロナウイルスの感染は、とどまるところを知らず、今やその脅威は世界中に拡大しようとしている。ロンドンが、パリが、ニューヨークが閉鎖され、都市は閑散として静まり返って久しい。国外からの入国を極端に制限し、感染の拡大を水際で食い止めようとしている。それは、我が国日本においても決して例外ではない。2月27日以降、政府は全国の小・中・高等学校、特別支援学校等に臨時休校を要請した。それに伴い図書館などの公共施設の休館も相次ぎ、人の集まる場所から急速に人の姿が遠のいた。メディアから、クラスター(集団)・パンデミック(爆発的感染)・ロックダウン(都市封鎖)といった今まで聞いたことのない言葉が連日のように飛び交った。誰もが、不安な日々を過ごしている。

 14世紀に起きた黒死病(ペスト)は、約70年間に断続的に流行し、当時のヨーロッパの人口 4億5000万人の22%にあたる1億人が死亡したといわれている。しかしこの黒死病は現代から見れば、ヨーロッパというごく限られた地域病にすぎなかったかもしれない。今はどうだろう、飛行機や電車や船によって人や物が瞬時に大量に行き交う時代である。その移動する速度によって感染のスピードも拡散していく。だんだん世界が小さくなっていくのを実感してやまない。黒死病は、15世紀に入りようやく自然消滅したようだが、一日も早くこの拡大の収束が望まれる。

 世界が閉ざされていく中で、自宅待機を余儀なくされた子どもたちに対して、その閉ざされた窓を開けるようにデジタルの世界でのさまざまな支援が行われている。出版業界では、期間限定ではあるものの、電子書籍の無料公開に踏み切る事例が相次いでいる。角川書店では児童書等414タイトル、学研の『まんがでよくわかるシリーズ』他、集英社の『週刊少年ジャンプ』他、朝日新聞出版の『科学漫画サバイバル』他、講談社の『宇宙兄弟』他、主婦の友社は『頭のいい子を育てる366』シリーズから毎日1コンテンツをインスタグラムとツイッターで配信した。児童図書専門出版社の銀の鈴社では、谷川俊太郎、内田鱗太郎など児童書・絵本・詩集500冊を公開し、子どもたちの学習を支援した。

 また、音楽の分野では、予定されていた多くの音楽イベントが中止となり、それに携わっている業界関係者の混乱を招いている。私の作品が演奏予定だったコンサートも中止となった。その流れは今も続いているし、いつ解禁になるか誰にも分からない。そんな中で、音楽業界でも、You Tubeチャンネルを通してコンサート映像を公開し、音楽という豊かな潤いの世界を自粛する人々の心に提供し続けている。

 このように、世界全体が鎖国化し内へ内へと閉ざされていく中で、いかに文学や音楽等の芸術分野が人の心に寄り添っているかを知らされる。これからも開かれた世界へと発信し、人々の心に豊かさを届けられることを願ってやまない。

(2020.4.5)