コロナ禍にある音楽~音楽の存在の大切さを認識した思い。① 島 茂雄(CARS幹事/日本楽譜出版協会理事)
今年の2月ごろより新型コロナウイルス感染症拡大のニュースが世界を席巻し始めました。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、世界各国でロックダウンが実施され、日本でも2月末の学校関係の臨時休業要請に始まり、3月末にさらに感染拡大されたため、4月7日に政府による「緊急事態宣言」が発令され、特措法を根拠に外出自粛の要請や施設の休業要請・指示が出されました。日本中の国民に対して国民生活活動の不要不急の外出の自粛が呼びかけられました。4月から5月にかけて経済活動をはじめすべてが止まりました。音楽業界でも演奏会や音楽イベントは、自粛により中止になり、楽器店の営業自粛にともない音楽教室も休講されました。
小生は、別件依頼でヨーロッパ、特に、イギリスやドイツの会社や博物館と作曲家の画像等のやり取りをしていましたが、ロックダウンの最中、会社の事務所は閉鎖されていて、皆さん自宅でPCテレワークを実施しており、日本の所轄部署に提出する文書等の代表者のサインや所轄の役所との手続き等ができないと報告がきました。日本以上にヨーロッパの実態をメールのやり取りで感じました。中でも画像を検索していましたら有名な楽聖ベートーヴェンの画像にマスクをしている画像を発見しました。パロディのつもりでしょうが、生誕250周年の時なのに、とても残念でした。何かを示唆しているような気がします。
政府の「緊急事態宣言」は、5月25日に解除されました。6月になってようやく少しずつ経済活動自粛が解除され始めましたが、多くのビジネスマンは、まだ、会社からの要請で自宅でのテレワークを実施していました。会社内や他社や団体との会議もZOOM等のネット会議が盛んに行われていました。このように、人々は、集うことができず孤独な闘いが続いています。
小中学校や高校では、一部授業が開始されたところもありましたが、そのまま夏休みになったところもありました。大学の授業は、ネット授業が継続されているようです。
4月にSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)は、新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、令和3年度4月に施行を予定していた授業目的公衆送信補償金制度を一年前倒しの実施を政府の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策本部や文科省、文化庁の要請を受けて、授業目的公衆送信補償金制度を、令和2年度に限って特例的に補償金額を無償で実施できるよう文化庁に申請し、4月28日に認可、施行されました(平成30年著作権改正法の施行期日である令和3年度以降は、有償で本制度が開始される予定)。コロナ禍により政府の教育ICTの推進を前倒しさせるためや、GIGAスクール構想推進のために行われました。デジタル教科書やオンライン学習・授業の環境が学校教育現場で前進できたのでしょうか?
学校の音楽の授業は、様変わりして、感染症対策を施した新しい工夫した音楽授業が行なわれていると聞いています。
音楽関係では、引き続きコンサートやオペラやバレエなどの公演は、すべて中止や延期になりました。海外からの演奏家公演もすべて中止になりました。POPSやロック・コンサート公演やミュージカルや演劇等のイベントもすべて中止になりました。イベント関係者の仕事が数か月間無くなりました。演奏家や俳優は、公共の場での活動が奪われました。それだけでなく、イベントの舞台裏で支えて仕事をしていた人々の活動の場も奪われました。
その中にあって6月25日にサザンオールスターズがイベント関係者や医療従事者への感謝を込めて無観客ネット配信ライブを実施しました。ネット配信用チケット(視聴券)が販売され、無観客公演ライブをPCやスマホ等に対して8つのライブネットメディアからライブ配信され視聴されました。エンタメ復活の狼煙を上げた象徴的な出来事として、大きな話題を呼びました。推定視聴者数は、約50万人を超えたといわれており、日本中を音楽の力で笑顔にしたようでした。
それ以降、スポーツ関係では、6月に野球が無観客で開催され、その他、一部のサッカー、競馬、相撲などが無観客試合で開催されはじめました。それらは、TVライブ中継やネット配信されました。国民に失われていた楽しみである娯楽の一部分が再開してきた感じがしました。しかし、7月に入って自粛後の反動でしょうか急速に感染者が増加し始め第二波が発生し始めました。
夏休み期間中も自粛要請を継続したことにより、9月に入り感染者が沈静化し始めたことを期に、スポーツでは、野球やゴルフやテニス等のイベントや海外での大会等では、無観客や一部観客を入れて開催が始まりました。これらは、TVライブ中継だけではなく、ネット配信、オンデマンド配信がされるようになりました。
ネットサイトを持つベルリン・フィルの映像配信サイト「ベルリン・フィル・デジタル・コンサートホール」が無観客ライブ・コンサートをネット配信しました。リアルの演奏会が開催されない中で、オーケストラの個々の演奏家たちによる無観客演奏会をライブ配信やオンデマンド配信されました。9月に入って、一部観客を入れたオーケストラ演奏会をライブ配信やオンデマンド配信され、自宅で自粛していた世界中の音楽愛好家を楽しませました。
また、演奏会の機会を失った国内の著名オーケストラである新日本フィルは、自宅で自粛生活しているオーケストラの各メンバーに「パプリカ」の編曲のパート楽譜をPCで送信して、各パート部分の演奏を各メンバーがスマホで自撮りしてテレワークで動画を送信し、企画発起人のトロンボーン奏者が全員分の動画を集めてPC編集し、YouTubeにパートごとに動画を掲載し、メンバーで確認しながら編集したそうです。各演奏者がパート演奏したテレワーク動画をZOOM等のソフトで編集し、オーケストラ63人分の63の動画画面が同時合奏したように編集した動画をYouTubeに配信したそうです。視聴回数が約200万回を超えたそうです。さすがにプロの演奏、各自が寸分狂わずに動画で合奏していました。会議で使用されていたZOOM等のテレワーク用ネットメディアソフトとPC音楽ソフトで編集したとはいえ、スタジオを使用せず約60人分のテレワーク動画が同時に合奏されたシーンは、ちょっと感動的でした。この模様は、TVで「はなれてひとつに奏でる」~奇跡の“パプリカ”誕生秘話~のタイトルでドキュメンタリー放送されました。
身近な娘のピアノ教室でも有名なアニメ映画『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」の曲を各自が自宅のピアノで各パートをスマホで自撮りして、ピアノの先生の所に動画を送信していました。各自の動画をZOOM等でピアノ連弾演奏したように編集した動画をYouTubeで見ることができるように配信したそうです。リアル演奏ができないことで、プロ・アマ問わず工夫した演奏の楽しみ方がネット配信メディアの活用により誕生したように思います。個々の孤独な活動が音楽の絆で結ばれたように思いました。このような演奏動画が日常を失われた生活に潤いを感じさせることを実感した瞬間でした。 (②に続く。)
2020.12.16(ベートーヴェン生誕250年のこの日に)
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