Withコロナ禍、東京2020オリンピック・パラリンピック ~困難の中でこそスポーツの力を~① 島 茂雄(CARS幹事/日本楽譜出版協会理事)
【執筆者】島 茂雄(一般社団法人日本楽譜出版協会・理事・事務局長・著作権委員会名誉委員・前制作委員会委員長/CARS幹事)
スポーツ・イベントも海外・国内でも徹底した感染症対策を施すことで、Withコロナ禍の状況の中で、世界4大都市で行われるテニスの4大国際大会やゴルフの全英、全米の国際大会やサッカーの国際大会、体操や柔道の国際大会等が開催され実施されつつあります。国内もサッカーのJリーグやプロ野球や競泳の国内大会等も開催されています。東京2020オリンピック・パラリンピックもWithコロナ禍の状況の中で開催が実施されました。東京2020オリンピックの開会式をTV観覧しましたが、開会式といえば、1964年の東京オリンピックの開会式では、開会式の冒頭に團伊玖磨作曲の「オリンピック序曲」、今井光也作曲の「オリンピック東京大会ファンファーレ(東京オリンピック・ファンファーレ)」や古関裕而作曲の入場行進曲「オリンピック・マーチ」が思い出されます。吹奏楽やブラスバンドやオーケストラ等で1964年以来、多くのスポーツ大会等でよく聞きなれた名曲です。一度、聞いたら覚えてしまうほどの名曲です。
その後、1984年ロサンゼルス・オリンピックでは、映画「スター・ウォーズ」で有名なジョン・ウィリアムス作曲の「オリンピック・ファンファーレ」等、オリジナル曲が披露されました。その後のオリンピックの音楽として、人々に親しまれています。1992年バルセロナ大会の開会式では、世界三大テノールの一人であるホセ・カレーラス(スペイン)が音楽監督を務め、坂本龍一が自ら作曲した楽曲でオーケストラの指揮を担当しました。オリンピックでのオリジナル曲として披露されました。
東京2020オリンピックの開会式の音楽は、楽しみにしていました。入場行進曲に日本のカルチャーで世界中に愛されているゲームのテーマ曲が選曲されました。すぎやまこういち作曲の「ドラゴンクエスト」のテーマや植松伸夫作曲の「ファイナルファンタジー」をはじめとするゲーム音楽をオーケストラ演奏で演奏されました。著名なゲーム音楽はわかりましたが、他の曲はゲームオタクならば理解できたでしょうが、一般の人々には、どうでしたでしょうか。開会式等のイベント関係には、色々問題があったようです。競馬のGⅠファンファーレでも有名なすぎやまこういち氏や昨年、亡くなった服部克久氏などのような著名で優秀な作曲家によるオリジナルな東京2020オリンピック・ファンファーレや入場マーチが聴きたかったように、思いました。
東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会がイベント開催を大手広告代理店に全面依存している様子など問題点も多くみられました。著名で優秀なイベント全体を総合的にプロデュースするプロデューサー、芸術・文化監督の存在がいないように思いました。また、東京2020オリンピック・パラリンピックをテーマにした音楽は、著名な作曲家やアーテストで何曲か作曲されて演奏楽曲がテーマ曲として放送されていましたが、コロナ禍で音楽業界も積極的に東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会に対して日本の音楽文化を推薦する活動をしてきていないようであり、人々が一度聞けばすぐ覚えてしまうような名曲を作曲できる新進気鋭な優秀な作曲家が誕生してこない現代の音楽界の現状に心を寂しく思いました。過去の例を語るまでもなく、音楽は、人々の思い出とともに感動の力を共存する効果があると思いますので、日本の代表する音楽家が音楽文化の活動の成果を東京2020オリンピックの開会式で残せなかったのは、少し残念でした。
東京2020オリンピック・パラリンピックは、アスリートが主役です。日本人のアスリートのみならず外国の数多くのアスリートが活躍されたことで、私たちにスポーツからの多くの感動をもたらしてくれました。連日、日本チームの金・銀・銅メダル獲得のシーンなどTV五輪放送を通じて多くのスポーツの感動が伝えられてきました。柔道、水泳、競泳、レスリング、ウエイトリフティング等の日本のスポーツのお家芸のみならず、今回、期待されていたソフトボールや野球も念願の金メダルを獲得しました。今までメダルを獲得していた競技、アーチェリー、フェンシング、卓球、バトミントンでも団体チームや混合ダブルスチームなどでの活躍で金、銀、銅メダルを獲得しました。
また、女性が活躍した競技、ボクシング、体操、ゴルフ、自転車競技、バスケットボールでもメダルを獲得しました。今回のTOKYO2020から新競技として、スケートボード、サーフィン、スポーツクライミング、空手等、初開催した競技でも日本チームがメダルを獲得しました。特に、スケートボードの10代の活躍には、驚きと感動を感じました。その他、陸上競技、サッカー、バレーボール等も善戦して、前回より、良い成績を残しました。また、今まで国際TV中継では、中々観戦できない競技、セーリング、馬術、トライアスロン等、海外のアスリートたちもたくさん活躍した競技をTV放映やネット動画配信等で観戦できました。
毎日、アスリートたちが活躍する素晴らしいプレーを観戦する中で、アスリートが喜びに涙した顔や残念だったくやしさで涙している顔、力を出し切ったさわやかな顔などの感動から私たちも元気になれる力をもらえました。
東京2020オリンピックは、コロナ禍の中で、無観客で開催され、アスリートにとっても制約の多い環境下でベストを尽くさなければならない困難さがあったことでしょう。そのような環境下で選手をサポートしてきたスポーツ・スタッフとの絆や家族との絆、各グループ競技団体のアスリート同志の絆がアスリートに力を与え、困難の時だからこそアスリートから伝えられるスポーツの感動の力から、私たちは、何度も元気になれる力をもらえました。
閉会式では、入場行進曲は、1964年の東京オリンピックの時に使用された古関裕而作曲の「オリンピック・マーチ」の曲に合わせて、1964年の東京オリンピックの時から毎回のオリンピックで行われている各国の旗手が先に入場してから、各国の選手団が合同に入場するスタイルで行われました。古関裕而作曲の「オリンピック・マーチ」を「マーチ」、「ジャズ・スタイル」、「ロック・エイトビート」等のアレンジ曲で展開しながら演奏されていました。SNSでは「古さを一切感じない」「時を超える名曲だなー!」などと話題になっていました。
1964年の東京パラリンピックでも披露されたという世界中にヒットした永六輔作詞、中村八大作曲、坂本九の歌で有名になった「上を向いて歩こう」が坂本九の本物の歌声を流して、東京スカパラダイスオーケストラが演奏しました。
また、大人気アニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」を高校の吹奏楽部がリモート演奏参加する中で東京スカパラダイスオーケストラと合同演奏が披露されました。次回のオリンピック・パラリンピック開催国フランス出身のシャンソン歌手エディット・ピアフ作詞・作曲の世界的名曲「愛の讃歌」を越路吹雪が歌った岩谷時子の日本語歌詞をシンガー・ソングライターのmilet(ミレイ)が歌い、後半は、原曲のフランス語で歌いました。最後に、ヨーロッパ賛歌の曲としても有名なベートーヴェンの第九交響曲の「喜びの歌」のメロディーを軽快なリズムとともに締めくくりを飾りました。
さらに、和太鼓の演奏とともに亡くなった人の霊を鎮魂するシーンとして、競技場のLEDビジョンに日本の郷土の踊りを紹介していました。アイヌ古式舞踊や琉球エイサーや秋田の盆踊りなどの映像が場内に流されました。締めくくりに場内の人々が盆踊りの定番曲「東京音頭」踊りを披露しました。舞台演出は、日本の祭りや伝統芸能や日本人のある公園風景など日本の国内的な光景が、説明なしで表現されていて、世界中の人々にどこまで理解してもらえたでしょうか?
2021.08.08(TOKYO2020オリンピック閉会式の日に)
(②に続く。)
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