ボクとカヌーと仲間たち 西澤 健治(CARS幹事/作曲家・ピアニスト)
ボクは今、葉山にあるお気に入りのカフェにいる。
自宅の仕事部屋で原稿を書くのも良いが、リラックスした気分で執筆できるのは、この場所が一番いいかも知れない。
窓越しでいつもの珈琲を飲みながらサーフィンやクルージングを楽しむプレジャーボートを眺めていると、ふと思い出したのが“湖畔で楽しむカヌーとの時間”である。
カヌーとの出会いは30年くらい前だと思う。
ある日、クルマ仲間の友人に誘われて、奥利根方面に出かけることになった。
キャンプに必要な道具を愛車に詰め込み、横浜のサービスエリアで待ち合わせをした。
友人のエステートワゴンのルーフには、Mad Riverと書かれた真っ赤なカナディアンカヌーが積んであった。そこから水上方面にクルマを走らせ、矢木沢ダムの入り口に到着したのが、明け方の3:00近かったと思う。まずカヌーをクルマから降ろし、車内からキャンプ道具や食材を次々と降ろして、積めるだけの荷物をカヌーに積んだ。カヌーの乗り方も漕ぎ方も全く分からないまま、いつの間にか湖畔の上を滑らかに進んでいた。後部席からいい感じで進んでいますよ!と声が聞こえ、孤独の時間ではあるが、このひと言がとても心の支えになった。月あかりだけが頼りなので心許ないが、しばらくパドリングしていると目も慣れてきたせいか、周りの景色や荷物を満杯に積んだカヌーが水面ギリギリを緩やかに、そして順調に目的地に向かっているのがわかった。時折、ピシャっと魚が跳ねる音や鳥や動物たちの鳴き声も聴こえるようになった。
間もなく向こう岸に着いた。おそらく2時間くらいここまでノンビリと漕いできたのだろう。時間の経過などまるで気にしていなかった。
それから現地で少し仮眠してから爽やかな朝を迎えた。
カヌーという乗り物を操縦したことがないボクは、夢の中でも現実の続きで一生懸命パドリングしていた。そんな曖昧な記憶ではあるが、確かに今でも鮮明に覚えている・・・。
まだ山には残雪がある4月下旬の丁度GW前のことである。練習する間もなくいきなりカヌーに乗り、説明も聞かずに漕いで向こう岸に着く、という少し無謀なスタートではあるが、これがボクのはじめてのカヌー体験となるわけだ。
何度か通っていると、そろそろ自分のカヌーが欲しくなった。
カヌーを大きく分けるとカヤックとカナディアンの2種類に分類され、ボクが夢中になったのはカナディアンカヌーだ。映画のワンシーンに出てくるような、後部座席に座り、船首には愛犬を乗せ、木製のシングルパドルでのんびりと水面を漕ぐ、といったまさしくあれである。
カヌーの虜になったボクは、後にAllyというノルウェーのBergans社が製造しているフォールディングカヌーを購入することになる。全長15フィートと16.5フィートがあったが、Ally611という15フィートで18キロと軽量なコンパクトサイズを選んだ。(カタログには1-2人用で、積載量310kg。荷物がなければ3人乗ることも可能と記載されていた。)カラーは当時グリーンとレッドの2種類があった。野山に囲まれた湖畔にはグリーンが自然とも考えたが、結局のところコールマンの200Aという赤ランタンを愛用していたため、北欧らしい鮮やかなレッドと決めた。
マイカヌーの進水式には湖畔で知り合った仲間たちが、食材やいろいろな飲み物を持ち寄って集まってくれた。
カヌーとの出会いで、多くの仲間ができた。
ボクが「来週、奥利根に行くよ!」というと、決まって迎えにきてくれる仲間がいる。
赤いランクル(ランドクルーザー)の40系(通称ヨンマルだ)のショートボディーに海外のプレジャーボートを牽引し、黒煙を上げながら山道を駆け抜けてやってくるUさんである。
プレジャーボートは自分でレストアし、牽引用のクルマも鉄道の線路の廃材で自製している。とにかく凄いのだ。ランクルも自分でレストアし、自宅にはスペアエンジンが2機ストックしてあるという。全く驚きである。(その頃の写真を掲載させていただいたので、ぜひご覧いただきたい)狩猟免許もある彼のクルマのシートには爪の付いた熊の毛皮が・・・。
まさしくアツイ男のギアである。
いつも、熊、鹿や野鳥などのご馳走をクーラーボックスに詰め込んでキャンプ地に届けてくれるのだ。狩猟とはワイルドに聞こえるかも知れないが、人と自然を愛するとても優しい方だ。ある台風で遭難しかけた人や、沈(水に沈むこと)したボートやカヌーの救助をプレジャーボートとランクルで行った。ほぼ一人で多くの人々を救助した伝説的男なのだ。
ボクは渓流釣りやボートでのルアー釣りが好きだったので、中学校の頃は釣り部の部長をしていたことがあった。
岩魚や山女釣りが少しばかり得意だったので、これらの食材を料理してみんなに食べてもらった。こんなこともあって、みんなボクのことを横浜のシェフだと勝手に思い込んでいたのだ。(笑)
また年間300日以上はカヤックで湖畔に出かけるのが日課、という初老のWさん。まるでこの山の主かのように自然を熟知している。野草やキノコの採り方を随分と教えていただいた。いつも採れる場所のキノコの量が減ると、違う場所でも成長するように自ら菌をまくのである。「西澤さ〜ん、そろそろアノ場所に行けば育っているよ!」と内緒でボクに教えてくれた。その場所には本当にいっぱいのキノコが見事に育っていた。
仲間の紹介はまだまだきりがなく書ききれないのでこのくらいで・・・。
基本的に魚、野菜やキノコは現地調達。食材や燃料などいろいろなものが切れてくると、友人のランクルを借りて町まで買い出しに行くこともあった。旧車のせいかオイルの匂いが充満する室内が四駆の魅力を一層引き立たせる。勿論クーラーなんて付いていないし、必要もないのだろう。30フィートのプレジャーボートにも興味があったので、湖畔で操縦の指導を受け、のちに船舶免許を取得することになる。
最近はコロナ禍もあり奥利根方面には出かけていないが、湖畔での想い出を大切に、逗子・葉山・佐島あたりをショートクルージングすることを楽しんでいる。
いろいろな仲間たちとの出会いは、本当に宝ものだとつくづくと感じる。
みんな元気にしているかな?
さぁ、そんな素敵な“湖畔で楽しむカヌーとの時間”を思い出しながら、創作しよう!
日常の出来事を綴るのも楽しいが、想い出を綴るのもいいなっ・・・。
Blog Musicというシリーズで小品を書こう!!
ボクはシェフじゃなくて、自分のことを“音の料理人”だと思っているのだが・・・。
まぁいっか・・・・・・
いつかまた湖畔に出かけようかな♪
