CARSフレンドだより 堀越 隆一(日本作曲家協議会理事/作曲家)
この夏新しいオーケストラ作品を書きました。オーケストラを書くのは久しぶりのことになります。それにここ何年かの間に僕自身の曲の書き方が変わってきているので、正直編成の大きな作品でそのやり方が出来るかどうかという不安もありながらの作曲でした。世間では節電を騒がれていましたが、エアコンの効いた室内でひたすらディスプレーに向かう毎日が続き、これだけ文明の利器のお世話になっていると、とてもたかが電気などとは口が裂けても言えない日々でした。曲のタイトルは「オクトーバーカントリー」、16分くらいの作品です。題名はブラッドベリの短編集『10月はたそがれの国』※[1]から頂戴しました。ブラッドベリ/Ray Bradburyは僕の好きな作家の一人で、今はそれほどでもないけれど学生時代にはよく読んでいた作家の一人です。この本の序文を初めて読んだとき、うまく言葉には出来ないが自分のなかにも確かにこんな世界があるなという強い思いが芽生えました。学生時代の話です。以来何らかの形でこの思いを自分なりに作品化したいと考えながら、今日まで長い時間が過ぎてしまいました。今回機会を得てこうして管弦楽曲に出来たことは僕自身にとって感慨深いものがあります。また一つの区切りにもなったと思っています。
僕がこの作品を書くうえで心がけたことは、以下の通りです。拙いかもしれないが自分の手持ちのツールを使って語り続けることに専念し、特定の技法やコンセプト、全体の構成には固執しない(願わくは聞き手にも意識させない)こと、そしてもし可能ならば語り続けることである確かな世界を出現させることが出来ればということです。この曲は文学作品の音楽的な描写ではありませんが、前述した短編集の世界と深い底の部分では繋がっていると作曲者は考えています。彼の短編集の世界に通底するように存在することがこの作品のモチーフになっています。
10月16日火曜日、初台の東京オペラシティコンサートホールで開催される[オーケストラ・プロジェクト 2012―日本の交響楽100年―未来に紡ぐ―]で初演されます。 演奏は東京交響楽団、指揮は大井剛史さんです。 僕以外の出品者の方は、
森垣桂一:オーケストラのための「レクイエム第4番」(初演)
木下牧子:ピアノコンチェルト(初演)
山内雅弘:管弦楽のための協奏曲(初演)
の三人で、全作品書き下ろしのオーケストラコンサートです。
音楽作品は演奏されて聴かれる所からその生命が始まります。もしお時間があるようでしたら是非多くの方達にお聴きいただければと願っています。