[ブログ] 楽譜de散歩
2013.04.05 創作秘話・作家の思い

楽譜とコピー(その2) 末吉 保雄(CARS幹事/作曲家)

【執筆者】末吉 保雄(CARS代表幹事/作曲家)

はじめに、去る3月13日急逝されたJASRAC職員松本勝義氏のご冥福をお祈り致します。CARS担当が、そう長かったわけではありませんが、CARSのことに、親身に、熱心にあたってくださいました。楽譜コピーをめぐる憂慮すべき事態と、その打開策についてです。

CARSを担当してくださるJASRAC職員の方々は、例外なく、誠実に、真摯に業務にあたってくださいます。故松本氏の名のみをあげて謝意を表するのは適切ではないと考えますが、"楽譜をコピーする“という事柄の多面性とその意味あいを、自分のこととして、踏み込んで考えておられたお人柄を忘れ難く、弔意と、毎日楽譜を書いている一人からの感謝を記しました。

その“楽譜コピー問題”。いま、出版物が「著作隣接権」として法制化されるための努力が続いていて、今回はそのことを書きたいと思いました。しかし、楽譜と書籍の出版とがいっしょにそれを進めるという関係の上での議論と見え、“楽譜”のことばかり言うのは、ひょっとして、意に反して「不適切」な発言に及ぶことをおそれ、機会をあらためます(とは言え、これからも書く事も、それと無関係ではありませんが…)。

ある新聞の解説記事。日韓のコンテンツ産業を対比して、日本は“著作権に厳しく価格が高い”、一方の韓国は“著作権の規制が緩く価格が安い、または無料”。

ページ最上部に太字で書かれていて、目にとまりました。この比較が適切か否かは、私にはわかりません。…そうなのか…と思いましたが、日頃、こちらの「楽譜の違法コピー」、その目に余る事態を苦慮する者としては、これで“厳しい”の?…と、つい感じてしまいました。あちらの“規制が緩い”というなら、こちらは厳しく規制していると聞こえます。そうなの…?

まあどちらが厳しいか、緩いかを論じるつもりはありません。コンテンツ産業の発展はけっこうなことです。自由な貿易のために、関税などの障壁をできるだけ減らす…それは重要です。ただ、日本の「著作権法」が発展のためのより自由な活動を「規制」している、だから緩和したほうがよい、そう聞こえてすっきりしませんでした。なにか、矛先の向け方が違いはしないか?

 “「著作権法」が邪魔だ”という声は、もうだいぶ前から聞こえます。JASRACを、なにか目の敵にした呟きも目立ちます。少しでも安く売るために、買うために、そこに立ち塞がるものはけしからん…そういう声が出る由来は理解します。ただ、著作物を世に出して生計をたてている者自身も、そこに加わるのかな?…それが、率直な疑問です。

「著作権」は、著作物を世に送り出す先人が勝ち取った権利です。以前にも紹介したように、「著作権は創作者の戦い」というスローガンを掲げる作者集団も有ります。気が付いたら授かりもののように公認のものであった、というものではありません。
このような権利は、守ろう、と強く意識されなければ、やがて衰退します。「著作権法」についての啓発活動も大切ですが、それ以上に、ものを創る人間の側の意識、主張も問われねばならないでしょう。さらに、「創る」ことそれ自体の人間的な意味を、「創る者」自身が考えねばならないのでしょう。まあ、しっかりやりましょう!(続)