楽譜とコピー(その3) 末吉 保雄(CARS幹事/作曲家)
「楽譜コピー」に明け暮れる日々をおくっています。
作曲家の日常としては、書きかけの自作を(私は、いまだに、自作を五線譜上に、鉛筆で、つまり自分の手で書いて)コンビニに行ってコピーしてきます(それをできるだけ早く、演奏を依頼している奏者に練習=研究してもらうために郵送する)。このところ健筆なので、しばしばこれを繰り返します。
演奏の仕事もしているので、ときに、100年以上も前に初演された昔のオペラ譜(外国で印刷、販売されたピアノスコア…作曲者は没後93年)を何ページもコピーしてもらって、さらい始めると「捲り」が大変だったり、部分を比較するなどのために、自分でもコピーしてきます。
自宅でも、限られた版形の少数ならコピーできますが、大部分はそうでないので、コンビニに行きます。重要な「仕事場」ですが、コピー機の前に先客が居れば、むろん待つことになります。コピーをしている途中で、次の人が来ると、私は人に待たれる事が嫌なので、“時間がかかりますから、どうぞ”と譲って、その人が終わるのを待ちます。
だから、けっこう長い時間をすごしているわけです。
最近こんなことが有りました。ずいぶん待ったのに「先客」は延々とコピーを続けています。明らかに市販の「曲集」の楽譜。そのページを次から次にコピーしてゆきます。…けっきょく2冊ぜんぶ!、待機最長時間の記録となりました。さすがに、つい、こう言ってしまいました。「いいんですか?曲集全部なんて…」と、先客は振り返って「ええ。みな自分のためのものですから…」。
たぶん、そうでしょう。しかし、もし、今はそうだったけど、のちに、これを人に貸してコピーさせて…その人が「仕事」に使ったり、それに、まだ市販されている「著作権」の有る楽譜だったら…と思うほどに、良い気分ではなくなってきました。
むろん、お付き合いの無い人に向かって“その楽譜は、コピーしても良い楽譜ですか?”などと尋ねるのは憚られます。
そう、ここまでコピー機も進化してきたのなら、コピー機に小さなデータ入力装置を付けて…[コピーしたい曲の名前、作曲者、出版社、目的etc.を入力してください]…これに入力すると『コピーできます。どうぞ』とか、『コピーはできません』(この場合、コピー機は始動しない)…などなどの機能が期待できないものでしょうか?
と言うのも、先日、こんな質問を受けて考え込んでしまったからです。とても真面目な中年の女性から「あの、楽譜のコピーってしてはいけないんですよねえ…?」と聞かれました。「してはいけない、のと、しても良いのが有って、つまり絶対ではありません。場合によるでしょう」と、あれこれ説明したのち[まずは検索]をと言いました。
私は、現在は、適正に(法の条文、規定趣旨に則して)、かつ楽譜をつくる人(自分もその末端)の利、あるいは意欲を損ねることのないようにコピーしているつもりです。とはいえ、その判断基準は、一般に広く理解されているほど、簡明とは思われません。
それで、「あつものに懲りてなますを吹く」とか、「めんどうだから、一切コピーはしない」…あげくに、<楽譜から縁遠くなってしまう>場合をまた、恐れます。