[ブログ] 楽譜de散歩
2015.06.26 著作権について など

楽譜とコピー(その5) 末吉保雄(CARS幹事/作曲家)

【執筆者】末吉 保雄(CARS代表幹事/作曲家)

先日、CARSの総会、今年度最初の幹事会に出席してきました。総会の通例で、人事異動、事業報告、決算、事業計画、予算、etc.の提案、説明、承認と進んだのち、今後の取り組み方などを話し合いました。そのなかで「この頃はなにかというとすぐスマホで色々なものを撮るので、ますます、それがコピーかどうか意識することも無くそうしている」という提起が有りました。
「コピー機を使うのがコピーで、撮って、送るのは、それは別な事」。ウーン、そのような意識が広がっているかも知れない…私も、そのことを思っていました。

以前、私が初めて出会った「電子万引き」のショックを、このブログに書いたことがありました。棚から取り出した売り物の楽譜のページを「携帯」で撮って友人と話していて…はじめは「私が買うのはこれでいいの?」と、確認しているのかと思いましたが、そうではなく、何かのアルバムの中から1曲だけ写し帰ろうということでした。後日、その店は、売り場で、携帯などが使えない様にしてしまったと聞きました。

それから2年ほど過ぎて、その間のスマホなどの広がりときたら! 加えて、ユーチューブに、フェイスブック、etc. 「革命的」な変化としか言い様がありません。後世の歴史家が、この我々の時代の「電子情報革命」をどのように捉え、年代区分するか知りませんが、もはやこの情報氾濫の行きつく先は…と考えるだけで恐ろしいことです。

ある「公開講座」の例も思い出しました。講師が、スクリーンに、次々に文字、数表、地図、風景や人物の写真を投影しながら話しを進めてゆきます。面白い。楽譜も出てきました。完成したばかりの(未発表の)楽譜の、ユニークな発想、手法を指摘しています。…そしてこの間、あちこちの席から、ときに立ち上がって「スマホ」がかざされました…。

帰りの道で思いました。あぁ、あの楽譜も、今頃はあちこちで、海の向こうでも何人かは見ているだろうな。

媒体を問わず、違法コピーは違法です。楽譜は「紙」に限りません。皮だろうと、電気信号だろうと、すぐ消えようが、消し難かろうが…。

こう言えば理解してくれる。そう思っていましたが、いやいや、そうばかりではありません。スマホを向けた小学生に、「ア、それはコピーだよ。してはいけないんだけど…」と言って、わかってもらえるだろうか? 電車の車内広告に掲載されているタレントの大写しの顔を撮っては友達に送る…それが日常という人たちに、「それはしても良い」「それはダメ!」と、どう説明したら容易に理解してもらえるでしょうか?

CARSが、これまでに作ってきたリーフレット、Q&A、チラシ、etc. 作ってから、だいぶ時が過ぎたようです。世の中は、どんどん変わって、CARSのメッセージを伝えたい人たちもまた、どんどん変わっています。伝えたい事柄は変わっていませんが、現象は変幻してゆきます。説明を、その仕方を工夫しなければなりません。

しかし、そうは言っても、リーフレットの文言ひとつだって、何人もが、長いこと、あれこれ議論して決めてゆく仕事ですから、簡単でも、容易でもありません。

以前も、あまりの「無謀コピー」の氾濫を前にして、なにか波打ち際の砂上に、線を描いているような気になったこともあります。それでも、まあ、根気よくやってきましたが、世情は、CARSにも、なかなか厳しいものになっています。著作権を主張する人たちを、あたかも、“旺盛な購買意欲をもつ消費者の前で自分の権利を振りかざして立ちはだかる厄介者”と言わんばかりの論調さえ増えてきています。

著作者、創作者の立ち位置も、刻々変わっているということでしょう。考え、またなすべきことは増え続けてゆきます。

(続く)