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田中 明
<プロフィール>
田中 明
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フランス、イギリス、アメリカの各音楽出版社で著作権管理の仕事を中心に続けた後、平成元年7月から現在に至るまで、全音楽譜出版社で楽譜出版事業に携わっている。元日本楽譜出版協会責任理事、同著作権委員長。現在、(社)日本書籍出版協会知財委員会幹事兼同法制小委員会座長、音楽図書館協議会著作権専門委員、著作権法学会会員、国際著作権法学会会員、CARS委員、(株)全音楽譜出版社取締役会長。
(下記タイトルをクリックすると、各セクションへリンクされます)
楽譜出版社の世界とは? 伝統文化を担う新たな取組み
楽譜出版をとりまく問題 オン・デマンド出版の功罪
楽譜ができるまで 楽譜出版社は生き残れるか
なぜ楽譜を出版するのか? 楽譜の「外側」からコピー問題を考える
4. なぜ楽譜を出版するのか?
対談写真04
〜文化っていうのは、過去・現在・未来の連続性の上に成り立っている訳ですね。途中が途切れたらだめですから、現在、すなわち、われわれと同世代の作品を育てて出版する。これが現在に在る出版社としてやらなければならない仕事だと思っているんです。〜(田中)
田中:
音楽を含めて文化っていうのは、過去・現在・未来の連続性の上に成り立っている訳ですね。途中が途切れたらだめですから、過去の人々に愛されて今に引き継がれてきた作品とともに、現在、すなわち、われわれと同世代の作品を育てて出版する。これが現在に在る出版社としてやらなければならない仕事だと思っているんです。紙媒体の出版物のみで当面の採算が取れなくとも、出版することで演奏され、その後の発展を期待するというトータルとしての出版行為と投資ですね。だから、しっかり宣伝しなければなりません。
小森:
今を生きる作曲家、作詞家と出版社との関係が、それだけ重要だということですね。
田中:
まさにおっしゃるとおりです。しかし、同時に、すべての方々の作品を出版できる訳ではありませんので、30社あるんだったら30社がそれぞれに各社独自の著作者を分担し、それに特化した普及活動をすることができれば理想的だと思いますし、あるべき姿でしょうね。企業の体力を考えれば一社で担える数には自ずと限りがありますからね。
小森:
僕が中学生の頃、「アメリカ交響楽(注4)」や「シューベルトの伝記(注5)」という映画がありました。映画のなかで、ガーシュウィン(注6)がまだ作曲家になろうなんて思っていなかったとき、自分の曲を出版社に買ってもらった、と言ってものすごく喜ぶんですね。シューベルトもそうです。ああ、作曲家になるっていうことは出版社に目をつけられる、っていうことなんだな、と。出版社に認められないと作曲家になれないんだ、と認識した記憶がありますよ。
注4: 「アメリカ交響楽」(原題:Rhapsody in Blue)
George Gershwin(1898-1937)の伝記映画。1945年製作のアメリカ映画。アーヴィング・ラパー監督 ロバート・アルダ主演。
注5: 「未完成交響楽」(原題:Leise Flehen Meine Lieder)
シューベルトの伝記を題材にした映画。1933年製作のドイツ・オーストリア映画。ウィリ・フォルスト監督 ハンス・ヤーライ主演。
注6: ジョージ・ガーシュウィン George Gershwin(1898-1937)
クラシックとラグタイム、ブルースやジャズなどの要素を融合させた代表作「ラプソディー・イン・ブルー」を始めとして、彼の作曲した数多くの作品は今もスタンダード・ナンバーとして愛され続けている。クロスオーバー・ミュージックの原点、アメリカの楽聖とも呼ばれ、39歳での若すぎた死もあって伝説のミュージシャンとなっている。
5. 伝統文化を担う新たな取組み
〜文化を担う、ということになると、とても大きなことになってしまい、一社とか一団体ではとても担いきれないことになります。そういったところで横の連携があれば、と思いますね。〜(小森)
小森:
ところで文化を支える、という視点から、古い、すでに著作権のない楽曲の楽譜を出し続けることも大切なことと思いますが。
田中:
もちろんそうです。例えば、日本の出版社としてもうひとつ大事な仕事だと思うことは、すでに著作権は消滅しているいろいろな楽器のエチュード類について、これの国内版がなくて未だに輸入楽譜に頼っているケースが沢山あります。輸入楽譜専門店に行っても、在庫がなければ何ヵ月も待たなくちゃならない。急ぐからといって航空便で発注すれば高い料金が掛かる。そんな不便を回避できるように、世界中でスタンダードとなっている教材楽譜はいつでも国内版を準備して安価で学習者が必要なときに入手できる体制を整える、ということを考えています。名付けて<インターナショナル・スタンダード・シリーズ>(ISシリーズ)というものを何年か前からスタートして、そこに、メソド(ISM)、エチュード(ISE)、レパートリー(ISR)、という3つのカテゴリーを設けて全音で出版をしています。器楽を勉強する人たちの助けになると思いますし、これも日本の出版社としてやらなければならない大切な仕事の一つだと思って、今、力をいれているところです。
小森:
文化を担う、ということになるととても大きなことになってしまい、一社とか一団体ではとても担いきれないことになります。そういったところで横の連携が必要ですね。
6. オン・デマンド出版の功罪
対談写真05
〜膨大な出版点数を常に全部在庫しているというのは将来的に考えても非現実的なことです。だからオン・デマンド出版というのは当然の帰結でもあるのでしょう。〜(田中)
〜従来の出版譜とオン・デマンドがうまく棲み分けは可能、という訳ですね。〜(小森)
小森:
これは僕が書いた歌曲の楽譜ですが、まず自宅でコピーをとって、それと同時に出版社に楽譜を渡して作ってもらっています。初演までには印刷譜があがってきてそれを配る、という流れです。30とか40部作って配っている訳です。オン・デマンドで1冊でも出版できる会社に頼んで作るんです。
田中:
オン・デマンド出版社も、この場合には小森先生と直接コンタクトをとっているからいいんですが、作家にとって具合が悪いのは、オン・デマンド出版社が作家とではなく、第三者の注文に応じて、JASRACに著作権料は払いますが、作家の目は通さない。つまり著者校正という極めて重要な段階を経ないで発行に至るということは大いに問題があります。集中権利処理の限界でもありますがね。
小森:
どうして無断コピーをするのか、というアンケートをユーザーにしたところ、「楽譜の入手が難しい」という答えが多いんです。そうしたユーザーの不便への対応策として、オン・デマンド、ネット配信で、という手段が生まれました。しかし一方、そうすると1部だけダウンロードして大量コピー、という危険がいわれています。大人数で演奏する合唱や吹奏楽、そして学校での懸念ですね。ところがポップスの分野ですと、演奏が少人数ですし、そうしたコピーされるリスクよりも、オン・デマンドのメリットの方が大きいという面もあります。オン・デマンド出版の功罪というのはどうお考えでしょうか。
田中:
ジャンルも多岐にわたりこれほどの出版点数になってくると、分野に限らずオン・デマンド出版は将来的に必要な技術手段です。ただ、現在ではひとつ懸念があります。もし、「今後、わが社は在庫を持ちません。すべてオン・デマンド対応にします」という出版社が出てきた場合、著作権法第81条1項2号(継続出版の義務)、すなわち、在庫切れは起こさないとする取り決めとの整合性をどうするかという問題があります。
小森:
在庫、ということですが、どれぐらいの在庫を抱えておられるのでしょうか?
田中:
冊数ではなく点数で言うと、全音では実際に動いている楽譜の保有点数で5,000点以上あります。それを半分以下にすべきと私は言っているんですが、なかなか出来ません。みんなこれも大事、あれも大事、ましてや編集者に訊けば、自分が手がけたものはどうしても残してもらいたいですから(笑)。でもいつかはバッサリとやらなくてはならない。5,000点というのはいくら大会社だって扱いきれません。2,000〜3,000点がやっとでしょう。しかも3,000点に絞り込んでも、それらを常に全部在庫にしているというのは、経営的にも適当とは思えません。だからオン・デマンドというのは時代的要請からしても当然の帰結といってよいでしょうし、メリットとしては絶版というものが無くなりますよね。しかし、作家たちも含めたコンセンサスの確立が先ですね。
小森:
オン・デマンド、といっても、少量を受注印刷する、という意味のこととネット配信と2つありますね。注文に応じて1冊でも印刷、という形のオン・デマンドなら、形としての紙媒体の出版は残りますが。
田中:
その場合でも、採算に合うような値段をつけて、ということになり、やはり金額は通常の量産よりは割高ということにならざるを得ません。通常の「楽譜」と違って、売り切りの形で、重版でコストの元をとる、ということを前提にしていないですからね。それを「高い」、と批判されても困るんです。
小森:
本当はネット配信でも課金できるシステムが整えばいいのでしょうが。海外の事情はどうなんですか?
田中:
5、6年前だったかな、アメリカでポピュラー音楽の楽譜をネットで配信・販売するというビジネスが大掛かりにスタートしたんです。売り文句は、「あなたも今日から楽譜屋になれる」と。会員になってレジとPCを設置するスペースさえあれば、それをリースするから、と。まあ、DMなどというシステムがそもそもそうですが、こういうのはアメリカならではの発想ですね。あれだけ国土が広いから直接店舗で売るということができない。でも楽譜はなかなかうまくいかなかったようです。採算性がないということですぐに中止になりました。 その一方、ドイツのショット社でも、ワーグナーやベートーヴェンなど、古い楽曲の楽譜のネット販売がスタートしています。ヨーロッパはアメリカより遅れていましたが、ずっと様子を眺めていて、これは有効だ、システムが発達して使いやすくなった、と思ったら早速うまく活用し始めたようです。ブージー&ホークス社とショット社、あの2つの大きな会社が同じデータベースですべての楽譜を供給するようになったんです。
小森:
そんなことをしたら、出版している楽譜が売れなくなりませんか?
田中:
実態をみると、そんなことはないんです。クラシック部門の楽譜というのは、必要に迫られて急いでとりあえず、そういう形で1部入手しても、保存すべきものはちゃんと印刷・製本された従来の楽譜を買うといった傾向があるんです。
小森:
従来型の出版譜とオン・デマンドのうまい棲み分けは可能、という訳ですね。
〜「作品のプロモーション」、という部分が、出版社の仕事として一般のユーザーには見えていない部分ではないかな、と思います。需要を創る、ということをしているんですね。〜(小森)
小森:
「作品のプロモーション」、という部分が一般のユーザーには見えていない部分ではないかなと思います。通常は、売れるから楽譜を出版しているというふうに見えている。でも実際は需要を創る、というところからの話なんですね。具体的には、どういうことをしていますか?
田中:
われわれの場合、典型的な例は、年に一回、出版社であるわれわれ自身が企画・運営してコンサートを開いています。一年間のプロモーション活動のしめくくりとして、音にして聴いてもらう訳です。本当はもっと大々的にやりたいのですが、予算的にできない、でも続けていかなければ、ということで室内楽レベルでやっています。すなわち、出版した、または、出版する新作を演奏の形でも紹介するといった試み(プロモーション)です。
小森:
たとえば合唱連盟でやっているコンクール、これは日本中からコーラス団体が集まりますが、彼らが演奏する曲の楽譜を展示、販売していますね。アマチュアですがけっこう深く興味をもっていますから、話題になるようです。また教育分野の出版業界でも、研究大会のような場で新曲を聴くようなことをしています。書いた方が実際に指導して、ですね。サンプルを配布しますが、それは新しい書き手を育てる、という意味ですね。こういった戦略は組織がないとなかなか難しいですが。
田中:
そういうところではお互いギブアンドテイクで協力関係になれればいいですね。「利用・開発」はすごくいろいろな意味を持っていて、展示、演奏、そういうプロモーション活動はすべてそこにつながるものと考えています。
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