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楽譜コピー問題協議会(CARS)
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櫻井 俊彦
<プロフィール>
櫻井 俊彦
1947年東京に生まれる。中・高校時代に合唱に親しみ、菊地初美、藤沼昭彦両先生に師事して声楽を学び、武蔵野音楽大学音楽学部声楽専攻に入学、卒業する。その後音楽教師を経てヤマハ(株)に入社し、旧浜松支店で楽譜・CD・ピアノ販売を経験する。1978年よりヤマハ銀座店で楽譜売場を中心に20数年勤務する。現在もヤマハミュージック東京・銀座店で主査として楽譜販売に携わっている。
 
いろいろな音楽体験を経て 楽譜には気持ちが込められている
楽譜の神様と出会う 音大生が楽譜を書かなくなった
パイは小さく、競争は激しく 楽譜セールスの工夫やしかけ
楽譜に対するこだわりが減っている? 楽譜販売の形態も変わっていく
コピー問題について おわりに
店頭の困ったお客さん
4. 楽譜に対するこだわりが減っている?
対談写真04
小森:
楽譜の買い物の仕方、という点で、時代の流れというのは感じますか?
櫻井:
バブルの頃は売り上げがすごく上がったんですが、それは1人のお客さまがたくさんの種類の楽譜を買ってくださることが多かったからだと思います。クラシックの場合、1曲に対して何種類も楽譜を買っていたのが、だんだんと景気が悪くなってくると、目的の楽譜一種類しか買わない傾向になってきたように思います。音楽大学の入学者も減ってきていますが、それに加えてレベルの高い学校でも生徒がそう何種類も楽譜を買わなくなり、そこが苦しいところですね。
小森:
輸入楽譜の扱いが多いのは銀座店の特徴とのことですが、地方のお店では売れない?
櫻井:
地方ではやはり輸入楽譜は売れないと思います。地方都市の特約店の販売状況をみると、専門的に対応するには種類が少ない、比較して買うことができない、相談しても分からないなど洋楽譜の量が少ないと思います。バッハのインヴェンション、ベートーヴェンのソナタとか、その程度で済んでしまうんですね。それも販売の中心はピアノだけです。
小森:
東京と地方で需要の動向が違うということですか?
櫻井:
一つの例ですが、バイエルが終わってインヴェンションに進んでみようか、というときに全音版か音友版を選ぶ。そのとき、“ヘンレ”版(注5)とかペータース版も一緒に買いなさい、という先生はやはり地方では少ないのではないかと思います。バージョンが違うんだから原典版を見てみなさいとか。いろいろな版を見ることがピアノ演奏には必要と云える先生が少なくなりました。楽譜の値段も高いので何冊も生徒に買わすのが悪いと思う先生が多いと聞いております。 昔はもっと生徒自身が“ブゾーニ”版(注6)ではどのようなフレーズかとか、“ヘンレ”版ではどうかとか、比較をする方も多かったです。又、先生方もバージョンの指向が変わってきて、一時期ペータース版が全盛の時代がありましたが今はヘンレ版に変わっています。その傾向に落ち着いているわけではありませんが、地方では、そこまで生徒に薦めている先生が少ないのではないでしょうか。
注5: G. Henle Verlag(ヘンレ社)1948年設立 原典版を多数出版。
注6: Busoni (ブゾーニ)校訂版。イタリア生まれのピアニストであるフェルッチョ・ブゾーニ Feruccio Busoni(1866−1924)による校訂版
小森:
あまりエディションの違いにこだわらず、安いとか、入手しやすい楽譜を使っていると?
櫻井:
そういった版にこだわるような先生方は東京や大阪へ出て行ってしまう、ということもあるのかもしれませんが、地方の特約店を利用しない、ということもあるでしょうね。地方のお店はピアノ、エレクトーン本体の販売がメインになり、楽譜販売は添え物的です。店員に訊いてもわからない、ということもあるので、直接取り寄せる。今でも地方発送の通信販売がけっこうあるのはそういうことなんでしょうね。
小森:
ところで、ヤマハには音楽教室がたくさんありますが、そこでのテキストとのタイアップというのはあるんですか?
櫻井:
それはないです。音楽教室は独自のカリキュラム、システムにもとづいてレッスンを行いますので教材はヤマハ音楽振興会で制作していまして、一般に販売はしておりません。販売することは我々にはできないのです。ヤマハに関する限り、ヤマハ音楽教育システムの資格をお持ちの先生が教えますのでそこの教室に入っている生徒さんのみ使用することができます。一般の方がお買いになっても十分にテキストを使いこなすことはできないと思います。もちろん、サブテキストとして色々な作曲家の楽譜はお買い上げいただいております。
5. コピー問題について
対談写真05
小森:
売り上げの内訳をみるとピアノが多いみたいですね。和書でも洋書でも。コーラスは意外と低いんですね。楽譜の需要からいくと、もっとあってもいいような気がしますが。
櫻井:
売上げの内訳では、冊数の多寡を確認できませんが、やはり販売していても1部しか買わない、というお客さまが多いように感じます。和書ならもちろん1部でも販売していますが、輸入楽譜の場合、特別注文だと5部とか10部とかまとまらないと扱えないケースが多いです。ただ、店頭に在庫が5部置いてあっても、その中から1部しかお買いにならないことがありますね。その場合5部とか10部とかまとめてでないと取り寄せられません、とお伝えすると「どうして?」とお叱りを受けてしまうんですね。ただ、コーラスをやるということはだいだい四声部ありますから、最低4冊は必要で、それを1部しかお買いにならないということはコピーが前提だと思います。それでは海外出版社のものはお譲りできないですよ、とご説明していますけれども。まあ、いずれにしてもコーラスの分野は売り上げのシェアとしては低いということですね。
小森:
本当はもっと売れてしかるべきなんでしょうけれど。
櫻井:
もうひとつ、アマチュアオケのお話をすると、“プルト”(注7) は何プルト取り寄せますか?と訊ねると、前は8−7 6−5−4とか言ったわけですが、いまは1、1、1、1でいいです、と(笑)。1プルじゃオーケストラはできないですよ、って言ったら「コピーするからいいんです」と簡単に言われてしまう。ブライトコプフにしろベーレンライターにしろ、1、1、1、1じゃ売ってくれませんよ、それはあなた方がコピーすることを前提にしているわけで、出版社は売ってくれないです、とお願いするんですが。これはよくある話です。 ちなみに吹奏楽の世界だと、コピーというよりは学校間で楽譜の貸し借りをする、というケースが多いようですね。もちろんコピーもありますが。
注7: プルト(Pult、ドイツ語) 譜面台のこと。オーケストラでは1台の譜面台を弦楽器奏者二人で見ることから、奏者二人を1プルトと数えるようになった。また奏者の位置を表すときにも用いられる。
小森:
僕が書いた「窓際のトットちゃん」の楽譜も、よく「貸してください」といわれましたね。あまりそういうことが多かったので貸し譜をつくったんですよ。
櫻井:
「貸し譜」ということも、今は理解している方が増えましたが、なかなか理解してくれない方もいらして、貸し譜をコピーするという方も多かったですね。大学のオケもそうでした。なぜそうなるかというと、書き込みをしたい、と。で、書き込みはなるべくしないで、する場合は鉛筆で書いて、返すときに消しゴムで消して、というのがルールですが、そうなるとライブラリアンが最初からコピーをとってそれに書き込みをしたほうがいい、ということになってしまうんですね。本番もそれを使う。そうすると返していただいた後に手もとにそのコピー譜が残ってしまうんですね。真面目なオケはコピーも返却してくれますが、黙っていると次回はコピー譜で演奏ということもありますね。
6. 店頭の困ったお客さん
対談写真06
小森:
せっかく販売の最前線の方をお招きしたので、店頭でのエピソードをもっとお聞かせいただけたらと思います。店頭で売り物の楽譜をコピーさせてください、とおっしゃるお客さんもいるとか(笑)。
櫻井:
ものの道理が分かっている人と分かっていない人が両極端に分かれてしまっているような気がします。あと、年配の方でカラオケをおやりになる方で多いのが、「その曲しかいらないから」とおっしゃる方ですね。自分が歌いたい曲しかいらない、と。
小森:
合唱を楽しむ大学生がヤマハ銀座店に通って、店員さんとも仲良くなって、よくいろんなことを教えていただいた、そんな話が20年前ぐらいからあったそうですね。学生にとっては頼りになる存在だったと思うんですよ。その頃と比べると、今はアマチュアのコーラスや吹奏楽愛好者はけっこうマニアックで情報や知識が多くなりましたし、ネットで調べやすくなったと思います。昔と比べて、お客さんの知識とか気質とかの変化はありますか?
櫻井:
今おっしゃったように、自分で調べる方が多くなったのは確かですね。お尋ねになる内容がマニアックなものになってしまって、私どもではわからない、調べられないものがあったり、作曲家自身が出版を兼ねていたり、小さな出版社とか、自費出版とか、そういうのを取り寄せてくれ、と言われたとき、その1冊のために大変な労力がかかるんです。連絡先を調べて連絡をとり、と。
小森:
それで採算が合うんですか?
櫻井:
ネット上でそれを見ると楽譜の値段は安いんです。ところがこちらは取り次ぎに時間をかけていますから、そのぶん値段に上乗せをさせていただくわけです。ネットで定価10ドルでもうちで取ると2,000円ぐらいになってしまいます。すると、なぜそうなるんですか?と言われる。そこには通信料、手数料、私どもの利益も含まれるわけですが、それをまったく理解していただけないんですね。おかしいじゃないかと言われることがあるんです。とはいえ、ご自分で取り寄せてみて、楽譜の折れ、破損などのクレームとか、違う商品が送られて来たとか、キャンセルができないとか、支払いの不安とか、意外と送料が高かったなどのリスクを感じて戻ってきていただけるお客さまも結構います。
小森:
そうしたノウハウや手間に対する対価が認められていない、と。
櫻井:
図書館と同じように、訊かれてお答えして、出版社も全部教えて、「どうもありがとう」で終わってしまう。ひどいときはファックスが5枚、10枚まとめて送られてきます。 「このリストの楽譜を全部調べてくれ」、と。私どもですぐに対応できませんというと、すぐクレームになってしまうんですね。なぜできないんだと。自分は急いでいるんだと。そこで調べて、ぜひお買い上げをお待ちしています、とファックスしてもなしのつぶて。こちらから連絡したら、「それはもう海外の友人に頼んで直接注文したから」と言われる。頭にきますよね(笑)何時間も残業して。それがすごく多いんです。調査料をいただきたいというのが本音です。
小森:
昔は店内で目録を借りて、机を借りて目星をつけて買ったりしていましたね。自分で調べればいいんでしょうが人任せというのはどうでしょうか。
櫻井:
自分だけよければ、というのはとても残念ですね。立ち読みしていただくのは構わないんですよ。賑わい感がでてとてもいいんですけど、携帯で歌詞や楽譜を撮ってしまう、というのがあったり、書き写す人も多いんです。それはおやめください、と言うと「なぜいけないんですか?」と不愉快そうな顔をされる。で、また場所を移して書く。
小森:
どういう方が?
櫻井:
老若男女さまざまですが、どちらかといえば若い方はあまり手書きはしないですね。面倒くさいんでしょう。携帯で写す、携帯の電源をお店のコンセントから取る人もいます。要するにモラルというものが我々と違うのかな、と。
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