音楽は “コト消費” の好例!? 松尾 祐孝(CARS幹事/作曲家)
新型コロナウィルス感染拡大が、全世界規模で大きな影響を巻き起こしているこのところの状況の中で、皆さんは如何お過ごしでしょうか。不要不急の外出を控えていることによって、退屈な思いや閉塞感を感じておられる方も少なくないでしょう。
私自身も、平素に比べると外出の機会を減らして生活をしています。その分の時間的余裕で何をしているかというと、音楽を聴いたり、映画等の映像コンテンツを再生して鑑賞したり、読書をしたりということを自然にしていることに気がつきます。自宅に居ながらにして様々な芸術や娯楽を楽しむことができる便利な時代であることを、あらためてありがたく思う毎日です。
しかしまた同時に、人と人の繋がりを実感しながら、一緒に鑑賞したり、一緒に歌ったり、一緒に演奏したり、といった家族や友人や仲間と楽しみを共有する機会が、一方でとても尊いことにも想いを馳せる今日この頃です。
ママさんコーラス、合唱サークル、仲間たちとの吹奏楽、アマチュアジャズバンド、友人とのロックバンド、等といった趣味の音楽活動を自粛されている方もおられるでしょうか。早く再開できる社会環境になることを、私も願っていますし、きっと皆さんも願っておられることでしょう。
さて、話は少々変わって・・・。ここで“モノ消費”と“コト消費”という視点から音楽とその周辺について考えてみたいと思います。
“モノ消費”とは、旧来の消費という言葉とほぼ同義で、物品を購入する消費形態を意味します。音楽産業にあてはめると、レコード、CD、DVD,BD等や、それらを再生する装置を購入することが該当すると考えられます。
“コト消費”という言葉は十五年前位から目につくようになってきました。物品の購入のみならず一連の体験を対象とした消費行動を指す言葉です。近年では、インバウンド消費(訪日観光客の消費活動)の中でこの“コト消費”のリピート率が高くなっていることが注目されています。
この“コト消費”という概念を音楽とその周辺にあてはめて考えてみると、音楽を聴くことも、歌うことも、演奏することも、実は“コト消費”そのものであるということに気付きます。また、レコード、CD、DVD、BD等の購入といった、表面上は“モノ消費”に分類される物品購入も、それを鑑賞して楽しむことまで総合すると、結局は“コト消費”として捉える方が自然と考えられます。
音楽を鑑賞する立場での“コト消費”にしても、歌ったり演奏したりする立場での“コト消費”にしても、その作品・楽曲によって生成される音楽を“コト”として“体験”している訳です。ですからその作品・楽曲の作者(著作権者)に相応の対価が支払われることは、至って自然なことであると考えられます。このCARSの活動に即して言うならば、『音楽を鑑賞したり歌ったり演奏したりする楽しみの基盤となっている楽譜についても、不正なコピーや複製をすることなく、正しく利用しながら音楽を楽しみましょう。』となりましょうか。
それにしても深刻さが増しているコロナウィルス感染拡大の影響によって、重苦しい雰囲気が漂っていますが、何とか持ちこたえて、再び思い切り自由にノビノビと大勢が集いながら音楽や演劇や映画などの“コト消費”を、思う存分楽しめる社会環境に戻ってほしいと願うばかりです。皆様におかれましても、手洗いやうがいといった基本的な自己防衛を徹底されながら、くれぐれも健康にお過ごしください。
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